Never stop exploring. Who dares wins.


by g999er

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'82年東京生まれ早大卒。小心者の見栄っ張り。臆病者の命知らず。
'04年夏、カンボジアにて完全無防備、スコップのみを使用し地雷除去を敢行。
'05年はアフガニスタンにてアルカイダとニアピン。'06年、軍艦島上陸。

アジア・中東累計約30カ国程訪問。忌野清志郎のライブ主催などイベント企画。色んなことをしながら現在都内の広告代理店勤務。

こんな本にも載ってます。
http://amzn.to/b01Jqt

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→2010チュニジア/モロッコ
→GO for Afghanistan
→最後の行軍
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最後の行軍・tibet

指の間からこぼれ落ちる砂のように、気がつくと失われたものの残骸だけが残っている。その苦さを噛み締めながら、それでもなんとか日々をやり過ごし、生きていかなければならない。

バターの香りが僕を包んでいた。眼の前では僕の体の、ゆうに五倍はあろうかという巨大な仏陀の像が、腐敗しかかった魚のような眼で、僕を見つめていた。その眼は、弱く小さい人間を慈悲深く見つめる、というよりも、弱く小さい人間、つまりは僕をこそ蔑んでいるように思えた。

僕は、チベットにいた。

小さな寺の、小さな火に惹きつけられて、僕は自分を失いながらその火の方向をじっと見つめていた。僕が僕であることに気が付いたのはそれから間もないことだったと思うのだが、頬を涙が伝っていることに気づいた。僕は、僕を蔑む眼に救いを求めた。


それから数日を経た後、世界でもっとも高く、美しいという超然たる山を前にして、僕はその時と同じ感覚に襲われた。僕はその超然とした姿を前にして僕という一個の人間が、あまりにも脆弱で、矮小であるという事実を再び突きつけられた。ただ、お前は無力だと言われていた。僕は、その場ですぐにでもひれ伏したいという自己を抑えることしかできなかった。

少なくとも僕は、その時まで、自分は平等という堅固なる土壌の上を歩き、自分という人間が、自らの持てる最大限の力をもってして築ける、最大限の城に住んでいると感じていた。それこそが、僕の人生で築いてきた唯一のものだと思っていた。                 

しかし、彼らを前にして、僕はその傲慢な考えが、単なる傲慢にすらなりえず、思い上がりとしてすら扱われていないことに気づき、打ちひしがれた。僕は、仏陀の前にも、エベレストの前にも、無力であった。この世界の大地や、大気は、僕のためではなく、彼らのために存在していた。彼らは美しく、強く、僕は、無力だった。 

チベットは、あまりに美しく、巨躯で、強く、冷酷だった。
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by g999er | 2007-02-12 18:44 | →最後の行軍

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